超知能(SI)とは?トランプ大統領が国連でAIを呼び変えた意味と、AGI・ASIとの違い、いつ来るのか
2026年9月、トランプ大統領は国連総会でAIを超知能(SI)と呼ぶと表明し、29日には行政機関にSIの語を使わせる大統領令と、AI関連6社の首脳との超知能協定に署名しました。超知能とは何か、AGI・ASIとの違い、いつ来るのかを一次資料で整理し、人型ロボットとのつながりを考えます。
結論
トランプ政権の言うSIは、今あるAIの呼び名を変えたものです。9月29日の大統領令もSIの範囲を米国法の従来のAIの定義と同じにしており、研究者が定義する超知能(ほぼすべての分野で最も優れた人間を上回る知能)に今の公開AIが到達したとは確認されていません。
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2026年9月22日(現地時間)、トランプ大統領は国連総会でAIをスーパーインテリジェンス(SI)と呼ぶと述べました。29日には、行政機関にAIの代わりにSIの語を使うよう命じる大統領令と、AI関連6社の首脳との法的拘束力のない超知能協定に署名しました。
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AGIは幅広い知的作業をこなす汎用AI、ASI(超知能)はほぼすべての分野で人間を上回る段階です。到来時期は、企業関係者が早期実現の可能性を挙げる一方、研究者2,778人の調査は2047年に50%とし、条件が違うため単純には比べられません。
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介護や物流の物理作業をAIが直接担うには身体が要ります。日本政府はフィジカルAIを勝ち筋に掲げており、超知能の議論は人型ロボットを含む身体の実装と測定につながります。
目次(9)
2026年9月22日(現地時間)、トランプ米大統領は国連総会の演説で、AIを今後はスーパーインテリジェンス(superintelligence、超知能)、略してSIと呼ぶと述べました。1週間後の9月29日には、連邦政府の行政機関にAIの代わりにSIの語を使うよう命じる大統領令に署名し、同じ日にAI関連6社の首脳と、法的拘束力のないホワイトハウス超知能協定にも署名しています。
超知能とは、ほぼすべての分野で最も優れた人間を上回る知能のことです。研究者が定義するこの意味の超知能に、今の公開AIが到達したとは確認されていません。大統領令も、SIの範囲を米国の法律にある従来のAIの定義と同じにしています。以下、発言と大統領令を一次資料で、協定を報道と第三者の保存記録が伝える文面で確かめ、超知能とAGI、ASIの違い、到来時期、行き着く先を人型ロボットとの関係から考えます。
§01国連総会でのトランプ大統領の発言(2026年9月22日)
演説は第81回国連総会の一般討論で、現地時間9月22日に行われました。映像は国連の公式配信(UN Web TV)2で見られます。
AIに触れた部分は、書面と口頭で言い回しが違います。ホワイトハウスが同日公開した演説の要旨1では、AIを "hereinafter officially called 'Super Intelligence'"(以下、正式にスーパーインテリジェンスと呼ぶ)と書いています。演説では、米国のすべての文書で、できれば世界の文書でも、"the much more accurate term 'super' as opposed to 'artificial'"(人工ではなく、はるかに正確な「超」という語)を使うと述べました。理由は、artificialという語が知能を偽物のように聞こえさせるからで、"It makes it sound fake, and it is not fake."(偽物に聞こえるが、偽物ではない)と説明しています。
ほかに次のことも述べました。
- 国際的なAI管理の仕組み(本人の言葉ではglobalist scheme)を、米国は全面的に拒否する。
- 超知能は "encourage it, not rein it in"(抑えずに後押しする)。必要なら司法省などの法執行機関が対処し、司法省を通じて注視する。
- 超知能で勝った者が勝つ。米国は中国を大きくリードしている(本人の主張)。
改称の効力については、大統領自身が "Let's see if I have any power."(自分に力があるか見てみよう)と言い添えています。
事実
2026年9月24日に確認したホワイトハウスの大統領の措置一覧3では、改称を命じる文書を見つけられませんでした(最新の掲載は9月18日付)。その後、9月29日付の大統領令で改称が行政機関に命じられました(次の節)。
この発言を取り上げた佐藤仁氏の解説(Yahoo!ニュース エキスパート)5も、名称変更は今のAIが技術的に超知能へ到達したことを意味せず、今のAI全般をSIと呼ぶ使い方を各国政府や研究者が採用するとは限らないと指摘しています。身体の側でいま何ができているかは、ヒューマノイドの現状と課題にまとめています。
§02ホワイトハウス超知能協定とSI大統領令(2026年9月29日)
国連演説から1週間後の9月29日(火、米国東部時間)、トランプ大統領はホワイトハウスにAI関連企業の経営者らを招き、超知能をテーマにした会合と昼食会を開きました(ホワイトハウスの公式動画11)。日本時間では9月30日(水)にあたります。この日に署名された文書は二つあります。行政機関の用語を改める大統領令と、大統領とAI関連6社の首脳が署名した協定です。協定そのものは呼び名の変更に触れておらず、SIの語は題名に使われているだけだとCNBC16は報じています。
大統領令:行政機関の呼び名をAIからSIへ
大統領令の題名はInaugurating The Era Of Super Intelligence9(超知能の時代を開く)で、ホワイトハウスは同日にファクトシート10も公開しました。サイトへの掲載は日本時間で30日の朝です。主な中身は次のとおりです。
- 行政機関は、法律が許す限り、Artificial IntelligenceとAIの代わりにSuper IntelligenceとSIの語を使う。該当する場面では、AIという語の使用を "will not acknowledge"(認めない)。
- 対象は、行政機関の公式の通信、広報、ウェブサイト、報告書、政策文書など、制定法以外の文書(non-statutory documents)。すでに出した規則や大統領令、契約などを書き換える必要はない。
- SIの意味は、合衆国法典第15編第9401条(3)の人工知能の定義12に含まれる技術やシステムとする。この法律の定義では、人工知能は、人間が定めた目的のために、現実や仮想の環境に影響する予測や推奨、判断を行う機械ベースのシステムです。
- 科学技術担当の大統領補佐官(APST)は、60日以内に、連邦としてのSIの定義を定める法案の文言を大統領に提案する。今の法律上の人工知能の定義を修正するか、置き換えるかの評価も含める。
60日の期限は11月下旬に来ます。ファクトシートは改称の理由を、SIという名前は今開発されている技術の本当の能力を伝えるもので、AIという語が示すような人間の知能の模倣や自動化にとどまらないから、と説明しています。
それでも、大統領令の中でSIが指す範囲は、今のAIの法的な定義と同じです。能力を反映した連邦の定義は、これから補佐官が提案する段階にあります。大統領令の言うSIは行政の呼び名で、研究者が定義する超知能(ASI)に今のAIが達したと認めたものではありません。
ホワイトハウス超知能協定:AI関連6社の自主的な約束
協定の名前は、署名の後に記者団へ説明したマイク・ジョンソン下院議長によれば、The White House Accord on Superintelligence: A Joint Commitment on Frontier SI Responsibilitiesです(ABC News15)。大統領がSNSのTruth Socialに投稿した文書では、副題はJoint Commitment on Frontier Responsibilitiesだったと報じられています(CNBC16)。
署名したのは大統領と、Anthropicのダリオ・アモデイCEO、Googleのスンダー・ピチャイCEO、Metaのマーク・ザッカーバーグCEO、NVIDIAのジェンスン・フアンCEO、OpenAIのグレッグ・ブロックマン社長、xAIのイーロン・マスク氏の6人です(社名のアルファベット順)。NPR14はxAIを現在SpaceXの一部と伝えており、マスク氏をSpaceXの経営者として紹介する報道もあります。
協定の本文は、10月1日の確認では、ホワイトハウスのサイトで掲載先を見つけられず、確認できた範囲の署名企業の発表にも見当たりませんでした。以下は、大統領がTruth Socialに投稿した文書を伝えた報道(CBS News13、NPR)と、その投稿を第三者が保存した記録(Trump's Truth18)の画像によります。投稿元のページと画像はこちらから取得できず、保存画像が投稿元と同じものかは直接確かめていません。
協定は、各社には自社の技術を安全に、顧客と社会の信頼を得られる形で開発する責任があるとし、フロンティアモデル(最先端の大規模なAIモデル)を訓練、提供する各社が次の4層の管理と監査を実施すべきだと書いています。
- 訓練中と提供中のモデルの能力と、開発者の意図に沿って振る舞うか(アライメント)を、サイバーセキュリティや生物、化学の脅威といった分野で監視する社内の管理。モデルが意図しない形で技術システムに侵入したりアクセスしたりしないようにすることも含む。
- 管理と監視、検知が意図どおりに働いているかを確かめ、問題を是正させる社内チーム。
- 管理が働いているかを独立に評価する、外部の監査人または評価者との連携。
- 管理を担うチームや社内外の監査人から報告を受け、問題の是正を見届ける、取締役会の独立した委員会。
ほかに、各社が定期的に集まって安全の基準や優れた実践を作ることも盛り込まれています。
協定に法的な拘束力はありません。ジョンソン議長は業界による自主的な約束だと説明し、拘束力を問われた大統領は "morally binding"(道徳的に拘束力がある)と答えました(ABC News)。協定自身も "Over time, it may make sense to codify these steps into laws or regulations."(いずれ、これらの手順を法律や規則にすることに意味が出てくるかもしれない)と書くにとどめています。大統領は、10人ほどの委員会を作って全体を見守る案を検討していると述べ、協定を監督する人物(報道ではAI担当の責任者)を数日のうちに指名するとも話しました(CBS News、NPR)。
協定には、決まっていない点もあります。Al Jazeera17によれば、協定は外部の評価を誰が担うかを定めていません。NPRは、協定に並ぶ措置の一部は、各社がすでに何らかの形で実施しているか、以前に約束していたものだと伝えています。報道と保存画像で確かめた文面では、監査の報告を受けるのは各社の取締役会の委員会で、結果を公表する定めは見当たりません。
見方
4層の仕組みは、外から確かめられて初めて安心の材料になります。私たちは、各社がどの監査人を選び、評価の結果をどこまで公表するかを見ていきます。
まだ言えないこと
連邦としてのSIの定義の中身、協定を見守る委員会や監督役の人選、協定を法律や規則にするかどうかは、10月1日の時点で決まったという発表を確認できていません。
§03超知能(人工超知能・ASI)とは:AGIとの違いを比較表で
超知能という考え方を広めたのは、哲学者のニック・ボストロム氏です。1998年の論文How Long Before Superintelligence?19で、超知能を「科学的な創造性、一般的な知恵、社会的なスキルを含むほぼすべての分野で、最も優れた人間の頭脳よりはるかに賢い知性」と定義し、2014年の著書『Superintelligence』(オックスフォード大学出版局)で議論を広げました(本人の経歴書20)。
AGI(汎用人工知能)は、幅広い知的作業をこなせる汎用のAIを指します。どの水準から汎用と呼ぶかは、人や会社によってまちまちです。Google DeepMindの研究者らは論文Levels of AGI21(ICML 2024)で、AIを性能と汎用性の2軸で段階に分けました。性能はAIなしのLevel 0を除いて5段階あり、その作業に習熟していない人と同等かやや上のLevel 1から、熟練した大人の50、90、99パーセンタイル以上のCompetent、Expert、Exceptional(Level 2〜4)を経て、すべての人間を上回るLevel 5までです。汎用型でLevel 5に達したものを、論文はASI(Artificial Superintelligence、人工超知能)と呼んでいます。
| 呼び名 | 意味 | 定義の出典 | 到達状況 |
|---|---|---|---|
| 特化型AI | 特定の作業に強いAI。AlphaFold(タンパク質の構造予測)のように、一つの作業なら人間を超えるものもある | Levels of AGI | 実現済み(論文の分類) |
| AGI(汎用人工知能) | 幅広い知的作業をこなす汎用のAI | Levels of AGI | 2023年9月時点のChatGPTなどは最初の段階(Emerging AGI) |
| ASI(人工超知能)、超知能 | ほぼすべての分野で最も優れた人間を上回る | ボストロム(1998)、Levels of AGIのLevel 5 | 未達(論文の分類) |
| SI(米政権の呼び名) | 米国の行政機関がAIの代わりに使うよう命じられた語 | 2026年9月22日の演説、9月29日の大統領令 | 能力の段階を表す語ではない(大統領令は従来のAIの法的定義を当てている) |
よく使われる言い方では、AGIは人間並み、ASIは人間を上回る段階ですが、この論文はAGIを一つの水準に固定せず、汎用AIの段階として整理しています。
トランプ大統領のSIは、この表のASIを指す専門用語とは別物で、今あるAI全体を「超」と呼び直すものです。9月29日の大統領令も、SIの範囲を米国法の従来のAIの定義と同じにしています。米公共放送PBSのファクトチェック6も、超知能はほぼすべての知的作業で人間をはるかに上回るAIを指す専門用語で、今のAIの説明としては正確でないと指摘しています。
§04なぜ「AI」ではなく「SI」と呼ぶのか
大統領の説明は、人工という語が偽物に聞こえるから、でした。9月29日のファクトシートも、AIという語は人間の知能の模倣や自動化を思わせ、今の技術の能力を伝えきれないという趣旨で改称を説明しています。ただ演説では、改称の話が国際的な管理の拒否と中国との競争の話にはさまれています。
背景には、ホワイトハウスが2025年7月に出したAmerica's AI Action Plan7があります。計画は、米国はAIの世界的な優位をめぐる競争のさなかにあると書き出し、国連やOECD、G7などのAI統治の枠組みには負担の大きい規制を唱えるものが多すぎると批判しています。
翌日の9月23日、国連安全保障理事会はAIと国際安全保障をテーマに会合を開きました(国連のプレスリリースSC/164624)。国連のAI独立国際科学パネルの共同議長ヨシュア・ベンジオ氏は強力なAIの開発競争を "a race where everyone loses"(全員が負ける競争)と呼び、Anthropicのダリオ・アモデイCEOは扱いを誤ればAIは人類全体へのリスクになりうると述べました。OpenAIのサム・アルトマンCEOも、AIが自らの開発を助ける再帰的な自己改善を挙げて慎重さを求めています。一方、米国代表のマイケル・クラツィオス大統領補佐官(科学技術政策局長)は、国際的な対話が "global governance"(世界的な統治)へ流れてはならないと述べ、大統領の言葉を引いて超知能の管理の枠組みを拒否しました。改称したばかりの語を、米政府の代表が翌日には国連で使ったことになります。
見方
改称には、規制をめぐる議論の土俵を変える効果があると私たちは見ています。人工知能の安全と言えば国際協調の話になりやすく、超知能で勝つと言えば国家間の競争の話になります。ただし発言の並びからの推測で、政権がそう説明したわけではありません。
超知能という語は、開発の抑制を求める声明でも使われています。2025年10月にはFuture of Life Instituteが、安全に制御できるという幅広い科学的合意と社会の強い支持が得られるまで、超知能の開発を禁じるよう求める声明8を公開しています。米政府が大統領令で同じ語を今のAI全体の呼び名にしたため、禁じよという主張と後押しするという主張が、別のものを指したまま同じ言葉でぶつかっています。
大統領は演説で、AIが人類を滅ぼす、ロボットが襲ってくると言う人々を、温暖化で12年後に全員死ぬと言った人々と同じだと退けました。私たちはこの不安を、停止距離や監査ログのような測れる項目に分けて扱っています。安全の論点は安全性・リスク・対策とヒューマノイドの危険性を科学的に検証で整理しています。
§05超知能・AGIはいつ来るのか:予測の年表と確かめるべき指標
AGIはいつ来るのか。ASI、つまり超知能はいつ来るのか。答えは誰に聞くかと、何をAGIと呼ぶかで大きく変わります。
| 公表 | 誰が | 予測の中身 |
|---|---|---|
| 2024年1月 | AI研究者2,778人の調査(Graceら) | 科学の進歩が妨げられなければ、機械が支援なしにあらゆる作業で人間を上回る確率は、2027年までに10%、2047年までに50%(論文22) |
| 2024年9月23日 | サム・アルトマン氏(OpenAI) | 超知能は数千日のうちに実現するかもしれない。もっとかかる可能性もある(The Intelligence Age23) |
| 2024年10月 | ダリオ・アモデイ氏(Anthropic) | 多くの分野でノーベル賞受賞者より賢い「強力なAI」は、早ければ2026年に来うる(Machines of Loving Grace24) |
| 2025年4月2日 | Google DeepMind | AGIは今後数年のうちに来うる(ブログ25)。同日の論文は、強力なAIの2030年までの開発を「ありうる」とした(論文26) |
| 2025年6月 | アルトマン氏 | 2026年には新しい知見を見つけるシステムが、2027年には現実世界で作業するロボットが登場するかもしれない(The Gentle Singularity27) |
| 2025年7月30日 | マーク・ザッカーバーグ氏(Meta) | 超知能の開発は視野に入った(Personal Superintelligence28) |
シンギュラリティ(技術的特異点)は、技術の進歩が急加速し、その先の社会を予測しにくくなると想定される転換点です。AIの再帰的な自己改良などがその経路として論じられますが、能力の分類であるAGIやASIそのものとは異なります。
確度の高いこと
AI企業の関係者は早い時期に実現する可能性を挙げていますが、「早ければ」「ありうる」という可能性の表明です。アモデイ氏の強力なAI、DeepMindのAGI、研究者調査の「あらゆる作業で人間を上回る機械」は定義が違い、調査の「50%に達する年」とは確率の条件も違います。年を並べて差を測ることはできません。
不確実なこと
一つは、個別の研究工程の自動化が持続的な再帰的加速につながるか、その速度がどれほどかです。DeepMindの論文は研究の自動化による加速を「ありうる」とし、アルトマン氏も安保理で再帰的な自己改善に触れましたが、いずれも可能性として述べたものです。
もう一つは、知能の伸びが現実世界の作業にどれだけ速く届くかです。アモデイ氏自身、ハードウェアの製造や生物学の実験のような物理的な制約には、データセンターの中の天才の国もぶつかり、知能は魔法の粉ではないと書いています。
確認すべき指標
- AIが一人でやり切れる作業の長さ。研究機関METRの論文29は、AIが50%の確率で完了できるソフトウェア作業の長さ(人間の所要時間で測る)が、2019年以降およそ7か月ごとに倍になってきたと報告しています。
- ロボットが人の手を借りずに続けられる作業の長さ。ここでは自律性と遠隔操作を分けて見る必要があります。遠隔介入の範囲や頻度が分からなければ、映像だけでAIの自律能力は判断できません。身体側の到達点はヒューマノイドの現状と課題で追っています。
まだ言えないこと
AGIや超知能が何年に来るかを、根拠をもって一つの年に絞ることはできません。上の表は予測の幅を示すものです。
§06超知能の行き着く先:4つのシナリオと、知能は身体を求めるか
私たちは二つの問いを分けて考えます。知能がどれだけ速く伸びるか。その知能が身体を得て、現実世界で働けるか。この組み合わせで置いた4つのシナリオは私たちの整理で、どれが起きるかの予測ではありません。
| 身体への展開が速い | 身体への展開が遅い | |
|---|---|---|
| 知能の伸びが速い | A 身体を得た超知能 | B 画面の中の超知能 |
| 知能の伸びが緩やか | C 現場に広がる道具としてのAI | D 呼び名だけが先に進む |
A. 身体を得た超知能
アモデイ氏は、強力なAIは身体を持たないが、コンピューター経由でロボットや実験装置を操作でき、理屈の上では自分用のロボットを設計することもできると書いています。安全と統治が最大の論点になります。
B. 画面の中の超知能
身体への展開が遅いと、文書、ソフトウェア、研究の仕事は大きく変わる一方、介護や物流で持ち上げる、運ぶといった物理作業は直接には置き換わりません。記録や計画などの周辺業務は別に効率化しえます。
C. 現場に広がる道具としてのAI
超知能に届かなくても、ロボットの制御にAIが入り、現場の作業が少しずつ置き換わります。次の節で触れる日本政府の計画は、この方向に近いと私たちは見ています。
D. 呼び名だけが先に進む
呼び名を先に進める動きは、米国の行政ではすでに命令になりました。9月29日の大統領令で、米国の行政機関は、法律が許す範囲で公式の通信や政策文書などにAIの代わりにSIを使うよう命じられました。この先、能力も実装もゆっくりとしか進まなければ、呼び名と中身の差が開き、投資や政策の判断が揺れやすくなります。
知能は身体を求めるか
先のLevels of AGI論文は、AGIの条件にロボットの身体を含めるかは議論が分かれるとし、多くの定義は身体を使わない知的作業に絞っていると整理しています。AIの身体的な能力は非身体的な能力より遅れているようだ、とも書いています。論文が触れる、見知らぬ台所でコーヒーをいれる課題(ウォズニアックのコーヒーテスト)は、身体がなければ解けません。
Google DeepMindは2025年3月にロボット向けAIモデルGemini Robotics30を発表した際、これまでのAIの能力は主にデジタルの領域に閉じていたと書き、人型ロボットを開発するApptronikとの提携を明らかにしました。
知能の側が身体を欲しがるかどうかは、正直なところ分かりません。ただ、人間の社会は階段やドアノブ、工具のように人の体の寸法に合わせて作られていて、そこで働くには身体が要ります。超知能が現場の物理作業の人手不足に直接届くとすれば、人の環境で動ける身体を通ることになるでしょう。
その身体がすべて人型である必要はありません。車輪で動くロボットや専用機のほうが合う場面もあり、その分け方は人型である必要はあるのか(PFA入門)で扱っています。人と同じ場所で働く身体には、人の動きや間合いに合わせる力も要り、それを測る物差しが人間らしさは測れるのか(HLI入門)です。暮らしの変化はヒューマノイドで生活はどうなる?、社会の見取り図はヒューマノイドが変える私たちの生活、仕事、そして社会で描いています。
見方
暮らしや職場を実際に変えるのは、超知能の宣言より、身体を持ったAIが人の手を借りずに何分働けるかです。到来の年を当てるより、この数字を追うほうが役に立つと私たちは考えています。
§07日本はどう構えるか:人口減少の国で超知能と付き合う
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(令和5年推計)31では、総人口は2020年の1億2,615万人から2070年に8,700万人へ減り、2020年の約7割になる見通しです。65歳以上の割合は28.6%から38.7%に上がります(出生中位、死亡中位)。
政府は2025年6月4日にAI法32(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)を公布し、9月1日に全面施行しました(内閣府33)。2026年7月14日に閣議決定した新しい人工知能基本計画34は、日本の勝ち筋は「バーティカルAI」と「フィジカルAI」の実装によるAXだと書き、人との協働を実現する自律型ロボットなどの開発導入や、フィジカルAI基盤モデルの国内開発を掲げました。国際面では、広島AIプロセスを主導してきた立場から、国連などの多国間の場での議論にも積極的に関わる方針です。
米国は国際的な管理を拒み、日本は国際協調を掲げています。方針は違いますが、どちらかを敵と見る必要はありません。9月29日の大統領令が呼び名の変更を命じたのは米国の行政機関で、日本の法令や行政の用語を変えるものではありません。
見方
日本にとって大事なのは、AIを何と呼ぶかより、現場で人が何回介入せずに済むかです。2070年に人口が2020年比で約3割減る見通しの国では、画面の中の知能がどれほど賢くなっても、介護や物流、インフラ点検で体を動かす作業は直接には代わりません。超知能の議論を、身体を持つAIの実装と測定に結びつけるのが現実的な構え方だと私たちは考えています。
ヒューマノイドを社会にどう組み込むかは社会実装の未来像で、日本の技術力と勝算は人型ロボットで日本復活は可能?で分析しています。
§08よくある質問
超知能とは何ですか?
ほぼすべての分野で、最も優れた人間を上回る知能のことです。哲学者ニック・ボストロム氏は1998年の論文で、ほぼすべての分野で人間の最高の頭脳よりはるかに賢い知性と定義しました。ASI(人工超知能)とも呼ばれます。2026年9月時点で、公開されているAIがこの水準に達したとは確認されていません。
AGIとASIの違いは何ですか?
AGIは幅広い知的作業をこなす汎用のAIで、求める水準は定義によって違います。ASIはほぼすべての分野で人間を上回るAIです。DeepMindの研究者らの論文Levels of AGIは、汎用AIを熟練した大人の50、90、99パーセンタイル以上といった段階に分け、すべての人間を上回る最上位をASIとしています。
トランプ大統領の言うSIは、超知能が完成したという意味ですか?
いいえ。9月29日の大統領令は、米国の行政機関にAIの代わりにSIの語を使うよう命じたもので、SIの範囲を米国法の従来のAIの定義と同じにしています。能力が超知能に達したという宣言ではなく、連邦としてのSIの定義は、これから科学技術担当の大統領補佐官が提案します。
ホワイトハウス超知能協定とは何ですか?
2026年9月29日にトランプ大統領とAI関連6社の首脳が署名した、安全管理についての自主的な約束です。社内の管理と監視、それを確かめる社内チーム、独立した外部の監査人や評価者、取締役会の独立した委員会による監督の4層を、各社が設けるべきだとしています。法的な拘束力はなく、大統領は道徳的に拘束力があると述べました。
AGIはいつ来ますか?
定まった答えはありません。Anthropicのアモデイ氏は、強力なAIが早ければ2026年に来うると書き、Google DeepMindはAGIが数年のうちに来うるとしています。AI研究者2,778人の調査では、機械があらゆる作業で人間を上回る確率が50%になるのは2047年でした。定義も確率の条件も違うため、単純には比べられません。
ASI(超知能)はいつ来ますか?
AGIよりさらに不確かです。OpenAIのアルトマン氏は2024年に、超知能は数千日のうちに来るかもしれないと書き、Metaのザッカーバーグ氏は2025年に、超知能の開発は視野に入ったと述べました。ただ、AIが自らの研究を加速させるかどうかで時期は大きく変わり、根拠をもって年を一つに絞ることはできません。
超知能と人型ロボットは関係がありますか?
あります。介護や物流で持ち上げる、運ぶといった物理作業をAIが直接担うには、現実世界で動く身体が要るからです。Google DeepMindはロボット向けAIの発表で、人型ロボットの開発企業との提携を示しました。ただし、すべての作業に人型が最適とは限りません。
日本でもAIをSIと呼ぶ必要がありますか?
ありません。9月29日の大統領令が対象にしているのは米国の行政機関で、各国政府や研究者がこの呼び名を採用するとは限りません。日本のAI法は正式名称に人工知能の語を使い、2026年7月の人工知能基本計画もAIと書いています。呼び名より、そのAIが何をどこまでできるかを確かめるほうが大切です。
日本企業や日本の行政に影響はありますか?
この大統領令は、日本の行政や企業にAIをSIと呼ぶことを義務づけるものではありません。大統領令が用語の変更を命じたのは米国の行政機関で、日本の法令や行政の用語は変わりません。超知能協定に署名したのも米国の6社で、日本企業は入っていません。署名企業のAIを使う日本の利用者や企業にとっては、各社が約束した外部の監査がどう行われ、結果がどこまで公表されるかが確認点になります。
§09更新履歴と出典
更新履歴
- 2026年9月24日:初版
- 2026年9月24日:ファクトチェックを受けて予測の比較、人口推計の基準年、AGIの段階、演説日の表記などを修正
- 2026年9月24日:再照合を受けてシンギュラリティの説明を修正
- 2026年10月1日:9月29日の大統領令とホワイトハウス超知能協定の節とFAQを追加し、改称を命じる文書が見当たらないとしていた記述を更新
この記事について
この記事は生成AIが執筆し、別の生成AIが一次資料と照合しました。公開の判断は運営者が行っています。事実には出典を付け、推測や私たちの意見は見方として分けています。照合で未確認の点は本文に明示しています。
出典
演説の口頭部分の英文引用は、国連公式動画の英語自動字幕で確認しました(再生位置32:52〜35:54)。原音での逐語照合はしていません。
発言と国際会議
- 1The White House, President Trump at the United Nations: "While Others Have Talked, I Have Acted"(2026年9月22日)
- 2UN Web TV, United States - General Debate, 81st Session(2026年9月22日)
- 3The White House, Presidential Actions(2026年9月24日取得)
- 4United Nations, SC/16462 Security Council 10228th Meeting(2026年9月23日)
- 5佐藤仁, トランプ大統領はなぜAIをSI(超知能)に改称するのか(Yahoo!ニュース エキスパート、2026年9月23日)
- 6PBS News, Fact-checking Trump's speech to the 2026 United Nations General Assembly
- 7The White House, America's AI Action Plan(2025年7月)
- 8Future of Life Institute, Statement on Superintelligence
大統領令と超知能協定
- 9The White House, Inaugurating The Era Of Super Intelligence(大統領令、2026年9月29日)
- 10The White House, Fact Sheet: President Donald J. Trump Inaugurates The Era of Super Intelligence(2026年9月29日)
- 11The White House, President Trump Participates in a Meeting and Luncheon on Super Intelligence(動画、2026年9月29日)
- 12Legal Information Institute, 15 U.S. Code § 9401 - Definitions(大統領令が参照する人工知能の定義)
- 13CBS News, Trump and major AI executives sign "morally binding" voluntary controls: "It's almost like a constitution"(2026年9月29日)
- 14NPR, Trump says top tech firms have signed accord to 'self-police' AI development(2026年9月30日)
- 15ABC News, Trump says AI leaders signed a 'constitution' to police themselves(2026年9月29日)
- 16CNBC, Trump tries to rename AI 'super intelligence' as polls show him sinking on key issue(2026年9月29日)
- 17Al Jazeera, Trump, tech bosses sign voluntary pact pledging 'robust' AI safeguards(2026年9月29日)
- 18Trump's Truth, Donald J. Trump image post from September 29, 2026(大統領のTruth Social投稿を第三者が保存した記録。協定本文と署名欄の画像)
協定の本文は、2026年10月1日の確認ではホワイトハウスのサイトで掲載先を見つけられず、報道が伝えた文面と、第三者が保存した投稿画像によっています。投稿元の画像との同一性は直接確かめていません。
定義
- 19Nick Bostrom, How Long Before Superintelligence?(1998年)
- 20Nick Bostrom, Curriculum Vitae(著書『Superintelligence: Paths, Dangers, Strategies』2014年の書誌)
- 21Morris ら, Levels of AGI for Operationalizing Progress on the Path to AGI(ICML 2024。分類名は第5版、2025年9月24日改訂)
時期の予測と指標
- 22Grace ら, Thousands of AI Authors on the Future of AI(2024年)
- 23Sam Altman, The Intelligence Age(2024年9月23日)
- 24Dario Amodei, Machines of Loving Grace(2024年10月)
- 25Google DeepMind, Taking a responsible path to AGI(2025年4月2日)
- 26Shah ら, An Approach to Technical AGI Safety and Security(2025年4月)
- 27Sam Altman, The Gentle Singularity(2025年6月)
- 28Mark Zuckerberg, Personal Superintelligence(2025年7月30日)
- 29Kwa ら, Measuring AI Ability to Complete Long Software Tasks(METR、2025年)
身体と日本
- 30Google DeepMind, Gemini Robotics brings AI into the physical world(2025年3月12日)
- 31国立社会保障・人口問題研究所, 日本の将来推計人口(令和5年推計)結果の概要
- 32e-Gov法令検索, 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律
- 33内閣府, 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)
- 34内閣府, 人工知能基本計画(令和8年7月14日閣議決定)
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